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大阪高等裁判所 昭和63年(う)602号 判決

本籍

京都市北区上賀茂馬ノ目町二番地の四

住居

同市右京区御室小松野町二九番地の一八

会社役員

播岡彰夫

昭和一六年九月二〇日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、昭和六三年四月一一日京都地方裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から控訴の申立があったので、当裁判所は次のとおり判決する。

検察官 森川隆彦 出席

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役二年及び罰金六五〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から四年間右懲役刑の執行を猶予する。

原審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人豊島時夫作成の控訴趣意書(但し、第三1ないし3に法令適用の誤りの主張とあるのは、いずれも事実を誤認した結果法令の適用を誤ったという趣旨のものであり、事実誤認の主張と解する。なお、第一は「はじめに」と題するもので、独立の控訴趣意を含まない。)及び控訴趣意補充書に、これに対する答弁は、検察官森川隆彦作成の答弁書及び答弁補充書にそれぞれ記載のとおりであるから、これらを引用する。

一  控訴趣意第二について

論旨は、原判決は、昭和五五年ないし昭和五七年を通じ、〈1〉生命保険料、〈2〉国民健康保険料、〈3〉学校費、〈4〉家具購入費の一部、〈5〉水道・光熱費、〈6〉原判決添付預金一覧表記載の預金を、事業主貸し勘定に計上し、被告人の所得と認定したが、右〈1〉ないし〈5〉の各金員及び〈6〉の預金の一部は、被告人の妻富子(以下「富子」という)が被告人から生活費として渡された現金を含む現金収入(以下「生活費」という)から支出したもので、事業主貸し勘定から控除すべきものであり、原判決は右生活費等を過少に認定した結果、事実を誤認したものである、というのである。

そこで、所論及び答弁にかんがみ記録を調査し、当審における事実取調べの結果をも加えて、以下順次検討する。

1  富子の生活費について

所論は、原判決は、昭和五五年ないし昭和五七年当時における富子の生活費を月額三〇万円(年額三六〇万円)と認定したが、a年額約四八〇万円の現金収入があった、b昭和五六年一二月末ころ、その実母から現金二〇〇万円の贈与を受けていた、というのである。

aについては、富子の大蔵事務官に対する質問顛末書、同女の原審及び当審証言によると、富子は、被告人から昭和五四年一二月から五八年三月までの間は毎月生活費として二五万円支給され、他に被告人の事業手伝いの報酬として毎月五万円ないし一〇万円、得意先の反物修理のアルバイト報酬として毎月約五万円の収入を得ていたことが認められるから、右期間中同女は月額三五万ないし四〇万円(年額四二〇万円ないし四八〇万円)の生活費を得ていたことになる。

bについては、富子は当審で、昭和五六年末ころ、母から「子供達もおおきくなって経費も要るだろう」と言われて、二〇〇万円貰い、被告人に内緒にして暫くの間自宅で保管していたが、昭和五七年ころ、うち五〇万円位を京都相互銀行御室支店の被告人名義の普通預金口座(子供達の学校費を支払うため開設したもの)に入金した旨供述しているところ、大蔵事務官作成の査察官調査書(検七八号)によると右口座に昭和五七年八月七日現金五〇万円が入金されており、同女の原審及び当審証言にはいささか曖昧な点がないではないが、総じて、事実を曲げあるいはこれを隠蔽するなど格別作為的な供述をしているとは認めがたいことを考慮すると、同女の右供述を一概に排斥しがたく、同女は昭和五六年一二月末ころ、母から二〇〇万円の贈与を受けたと認めるのが相当である。

以上によると、富子の生活費は、昭和五五年ないし昭和五七年の間いずれも年額四二〇万円ないし四八〇万円のほか、昭和五七年にはさらに二〇〇万円を加算した金額となる。

一方、被告人方の基本的生活費については、富子の原審及び当審証言によれば、毎月一五万円ないし二〇万円(年額一八〇万円ないし二四〇万円)と認めるのが相当である。さらに所論は、富子の生活費等からの装飾品等代金の別途支出は証拠上必ずしも明らかではないが、三年間で二〇〇万円あったとされてもやむを得ないと述べており、富子当審証言もこれを否定するものではなく、これを上回ると認める証拠もないから、本件各年における別途支出がそれぞれ六六万七〇〇〇円あったものと認める。

原判決は、検察官主張の事業主貸し勘定計上金額のうち、昭和五五年分五三万一八〇九円、昭和五六年分七〇万九二九二円、昭和五七年分七八万四七五八円(計二〇二万五八五九円)を富子が支出したものと認定して、事業主貸し勘定から除外しているところ、関係証拠に照らし右認定は相当であるから、これに前記基本的生活費及び別途支出を加算すると、結局富子が支出した金額は、昭和五五年分二九九万八八〇九円ないし三五九万八八〇九円、昭和五六年分三一七万六二九二円ないし三七七万六二九二円、昭和五七年分三二五万一七五八円ないし三八五万一七五八円となる。

右のとおり富子の生活費等の額及び支出額を確定的に認定することはできないが、各年における最多収入額と最小支出額を考えると、昭和五五年分において一八〇万余円、昭和五六年分において一六二万余円、昭和五七年分において一五四万余円プラス二〇〇万円(計三五四万余円)の支出先不明金があった可能性を否定できない。

2  原判決が富子の生活費等からの支払と認めなかった支出について

〈1〉  生活保険料について

前田吉子作成の払込保険料等の照会に対する回答書(検一二四号)、大蔵事務官作成の査察官調査書(検二一号)及び富子の当審証言によると、日本生命保険相互会社との生命保険契約は、昭和五四年三月ころ富子が親しい友人から勧誘されて被告人名義で加入したが、保険料の支払は銀行口座から振込ではなく、年一回の集金の際現金で支払われており、その額は昭和五五年三月に一四万八六五七円、同五六年三月に一三万〇七二六円、同五七年三月に一二万一二〇〇円(これらとは別に昭和五七年七月に七七万六六〇〇円が支払われているが、これについては後に判断する)であることが認められる。

原判決は、これらはその金額等に照らし富子の生活費等からの支払であるとは認められないとしたが、これらは前記支出先不明金額の枠内であり、富子の原審及び当審証言に照らし、富子の生活費等からの支払と認めるのが相当である。従って、昭和五五年分一四万八六五七円、昭和五六年分一三万〇七二六円、昭和五七年分一二万一二〇〇円を事業主貸し勘定から控除すべきである。

また、前記昭和五七年七月に七七万六六〇〇円が支払われている分について、所論は、宇野禮子が被告人のため立替えて支払ったものであるが、同年中被告人が右立替金を支払ったことはないといい、原判決は、所論に沿う宇野の原審証言は信用できないとしてこれを認めなかった。

しかしながら、宇野の原審証言によると、同女は銀行の支店長の紹介により多額の高額保険契約を得て相当多額の収入(年収約一〇〇〇万円)を得ており、同女は昭和五七年七月一六日被告人との間で保険金終身三〇〇〇万円、死亡時四五〇〇万円、災害死亡時八〇〇〇万円、保険料七七万六六〇〇円(年払)を内容とする生命保険契約を締結したが、同女は右契約をとることによって翌月には約四五万円の歩合報酬を支給されることになっていたため、被告人に対する立替金を急いで回収しなければならない経済事情になかったこと、他の顧客に対しても立替払をしている例が少なくなく、その中には一年後に回収したものがあること、同女が記入していた日記用ノート(原審昭和五九年押第二六六号、当審昭和六三年押第一七八号の二一)は昭和五八年用のものであるが、その記載内容は、必ずしもノートに印刷してある年月日にあった出来事をその当該年月の欄に記載したものではなく、その月日欄とは関係なく、必要な事項を適当な欄に記載してあることは、その内容に照らし、一目瞭然であるところ、昭和五八年二月一七日から同年三月一六日にかけての欄には、同女が保管していた「保険料・配当金計算用紙兼見積書控」(前同押号の二二)等から、昭和五七年中の契約分を含めて立替の未清算分をまとめて記載し、回収できたものは朱線で抹消してあること、昭和五八年二月二六日(土)の欄に「10/20播岡、年払七七万六六〇〇円、S16・9・20生、S57・7・16」との記載があり、これが朱線で抹消されているから、本件契約につき宇野が昭和五七年七月一六日保険料七七万六六〇〇円を立替払し、その後被告人から右立替金を受け取ったことが認められる。

ところで、被告人から右立替金の支払を受けた年月日についての宇野証言は「半年とか一年とか相当経った後である」旨供述するにとどまり、定かではない。しかしながら、右ノートを仔細に検討すると、所論指摘のとおり、昭和五七年一二月二〇日の欄に「10/20はり岡集金の件でTELして社に行く」と、同月三〇日の欄に「10/29(土)はり岡集金」と各記載されている。前記昭和五八年二月二六日欄の「10/20」との記載は右の前者のことを記載してあるものと思われる。そして一〇月二九日が土曜日であるのは昭和五八年である(昭和五七年一〇月二九日は金曜日である)から、宇野が被告人から立替金の支払を受けたのは昭和五八年一〇月二九日と認められる。従って、右七七万六六〇〇円を昭和五七年の事業主貸し勘定から控除するべきである。

〈2〉  国民健康保険料について

前記査察官調査書(検二一号)、京都市右京区長作成の国民年金、国民健康保険料の納付状況の照会に対する回答(検一一八号)によると、右保険料は昭和五六年一〇月に七万九五二〇円、同年一二月及び昭和五七年二月に各七万九四〇〇円、同年四月、七月、九月、一一月に各四万五〇〇〇円が支払われていることが認められる。

原判決は、その使途目的、金額、支払い状況に照らすと、富子が生活費等から支払ったものとは認められないとした。

しかし、富子の当審証言は「一か月二万円位だったと思うが、二、三か月に一回集金人が集金に来るので、二、三か月分まとめて現金で支払い、通帳みたいなものに押印してもらっていた」というのであり、これらが前記支払先不明金額の枠内であることを考えると、富子の生活費等からの支払と認めるのが相当である。従って、昭和五六年分一五万八九二〇円、昭和五七年分二五万九四〇〇円を事業主貸し勘定から控除すべきである。

〈3〉  学校費(給食費・育友会費)について

前記査察官調査書(検二一号)、査察官調査書(検七八号)によると、右費用は被告人名義の京都相互銀行御室支店の普通預金口座から、昭和五五年三万六五五〇円、昭和五六年六万〇七五〇円、昭和五七年六万〇七二〇円が支払われていることが認められる。

原判決は右口座への入金状況に照らし、富子の生活費等からの入金とは認められず、この点についての富子の供述も右入金状況と符号せず、信用できないとするが、富子の原審及び当審証言、査察官調査書(検七八号)によると、右口座は、富子が昭和五五年二月六日、学校の指示で教育費払込のため保護者である被告人名義で新規開設し、同日五万円、同年三月三万円、同年四月一万円、同年七月五万円、同年一二月三〇万円、昭和五七年八月五〇万円がいずれも現金で入金されているところ、一万円ないし五万円の金員は同女が生活費等から入金したとみて不自然ではなく、昭和五七年八月の五〇万円は前記のとおり同女が贈与を受けた二〇〇万円のうちから入金したものと認められ、昭和五五年一二月の三〇万円については、その出所が明らかではない。

しかしながら、学校の給食費・育友会費は原判決が富子の生活費からの支出と認めた教育費(学習塾の月謝等)の支払以上に生活費の一部とみられる性質のものであること、右金額が支出先不明金額の枠内にあること、富子は原審及び当審を通じ、学校費は生活費等のうちから支払った旨供述していることなどを総合すると、学校費の支払いは富子の生活費等からの支払と認めるのが相当である。従って、昭和五五年分三万六五五〇円、昭和五六年分六万〇七五〇円、昭和五七年分六万〇七二〇円を事業主貸し勘定から控除すべきである。

〈4〉  家具類購入費について

前記査察官調査書(検二一号)によると、家具類購入費として昭和五六年は株式会社井上金物店に計二万七八四〇円、西村電化サービスこと西村宏に計一七万二五〇〇円(五月に六万四八〇〇円、一二月に一〇万七七〇〇円)、昭和五七年は北山リビングに計七三万二四四〇円、株式会社インテルナきたむらに八〇万円、株式会社ユタニ家具センターに一六万円、株式会社藤野たんす店に三二万五〇〇〇円、株式会社オクニシに四三万五六〇〇円、株式会社宮崎に一一五万円、株式会社井上金物店に一万四〇六〇円、田中稲造(布団店)に五万二四五〇円が支払われていることが認められる。

原判決は、右のうち株式会社井上金物店に対する支払分を除いた家具類購入費は、金額、支払状況、富子証言等からみて、富子が生活費等のうちから支払ったものとは認められないとした。

所論は、昭和五七年中に北山リビング及び田中稲造に対して支払った計七八万四八九〇円は富子がその生活費等から支払ったものであるというのである。

前記査察官調査書(検二一号)によると、北山リビングには昭和五七年一〇月に四五万円、同年一一月に八万四〇〇〇円、同年一二月に一九万八四四〇円(計七三万二四四〇円)、田中稲造には同年一一月に五万二四五〇円がいずれも現金で支払われていることが認められるところ、富子は原審及び当審を通じ、昭和五七年中の自宅の改築に際し、西村宏(但し、昭和五六年一二月支払分)、株式会社インテルナきたむら、株式会社ユタニ家具センター、株式会社藤野たんす店、株式会社オクニシ、株式会社宮崎から購入した家具類は建築請負業者の紹介により右各店から購入したもので被告人がこれらの代金を支払ったが、布団は買い替えたベッドが大きく既成の布団では間に合わなかったため、同女が北山リビングに特別に注文した羽根布団であって、金額が大きく被告人に言いにくかったので自分が支払った、田中稲造に対する布団代金も自分が支払った、と供述するところ、同女が他にも高額な家具類があるのに、右二点についてのみ自分が支払った旨原審及び当審を通じて供述していること、支払先不明金額の枠内であることなどを考えると、北山リビングに対する支払七三万二四四〇円、田中稲造に対する支払五万二四五〇円は富子の生活費等からの支払と認めるのが相当である。従って、昭和五七年の事業主貸し勘定から右計七八万四八九〇円を控除すべきである。

なお、原判決は西村宏に対する昭和五六年五月支払の六万四八〇〇円について、その金額等に照らし生活費等からの支払とは認められないとし、弁護人も当審で右認定を争わない旨釈明したが、富子は原審で昭和五六年一二月の支払は被告人、同年五月の支払は自分と明確に区分して供述していること、支払先不明金額の枠内であることを考えると、富子の生活費等からの支払と認めるのが相当である。従って、昭和五六年分のうち六万四八〇〇円を事業主貸し勘定から控除すべきである。

〈5〉  水道・光熱費について

前記査察官調査書(検二一号)によると、水道料金は昭和五五年七万一二七五円、昭和五六年八万七〇四七円、昭和五七年一万四五一〇円が東海銀行西陣支店の被告人名義の当座預金口座からの振込、ガス料金は昭和五五年一六万四一七五円、昭和五六年一五万七九九六円が右口座からの振込、昭和五七年二〇万五七五三円は現金支払、電気料金は昭和五五年一八万〇〇〇一円、昭和五六年一八万三〇〇二円が右口座からの振込、昭和五七年一九万三六九五円は現金支払となっていることが認められるから、水道・光熱費の各年分の合計金額は、昭和五五年四一万五四五一円、昭和五六年四二万八〇四五円、昭和五七年四一万三九五八円となり、毎月の水道・光熱費の支払額は昭和五五年三万四〇〇〇円余円、昭和五六年三万五〇〇〇余円、昭和五七年三万四〇〇〇余円となる。

原判決は、富子の原審証言は信用できないとして、右金員を生活費等からの支出と認めなかった。

しかしながら、富子は原審及び当審で、右水道・光熱費は生活費の一部であると考え、その支払に当てるため自己が保管していた所持金の中から年に九回位一回につき五万円位の金を被告人に渡していた旨供述しているところ、右金額は右水道・光熱費にほぼ見合うものであり、支払先不明金額の枠内であるから、右水道・光熱費は同女が生活費から支払ったとみても不自然ではない。従って、昭和五五年分四一万五四五一円、昭和五六年四二万八〇四五円、昭和五七年分四一万三九五八円を事業主貸し勘定から控除すべきである。

(なお、原判決は、前記口座に富子の供述に符号する現金の入金がないから富子の供述は信用できないというが、富子が右支払のため被告人に現金を渡しても、右口座に預金残高があればそれから支払えば足り、同女から受け取った金員をそのまま銀行預金に入金する必要はないから、原判決の右説示にも賛同できない。)

〈6〉  預金について

原判決は、原判決添付「預金一覧表」記載の預金は、昭和五四年末から昭和五七年末にかけての普通預金、積立貯金、定期預金のそれぞれの増加金額からすると、富子の生活費等からの預金とは認められず、被告人の所得からしたとみるのが相当である、と判断した。

しかしながら、前記認定の昭和五五年ないし昭和五七年における富子生活費等から、富子が支出したと認められる基本的生活費、装飾品等代金の別途支出、原判決が認定した飲食料品費、衣服費、家具類購入費のうち井上金物店に対する支払、教育費、国民年金保険料、当裁判所が認定した生命保険料(宇野立替分を除く)、学校費、家具類購入費のうち西村宏、北山リビング、田中稲造に対する各支払、水道・光熱費を控除しても、なお昭和五五年分において約一一六万余円、昭和五六年分において約七八万余円、昭和五七年分において約一九一万余円の支出先不明金額の存在する可能性があり、所論指摘のように、これら支出先不明金が右各預金(貯金を含む)に当てられたとみる余地があるといわざるをえない。

富子は大蔵事務官に対する質問顛末書、原審及び当審を通じて、生活費等から子供達のため各種預金をしてきた旨供述しているが、右供述によっても右預金をしたという銀行名、預金名義人、預金の種類、預金口座番号を特定することができないから、右支出不明金額と証拠上明らかな預金の種類、銀行名、名義人、預金増加額(利子・給付補填金を除く)を総合して考えると、右支出先不明金は前記〈3〉で認定した京都相互銀行御室支店被告人名義の普通預金を含め、昭和五五年においては別表〈1〉記載の普通預金、積立貯金、定期預金に計一一五万〇五八七円、昭和五六年においては別表〈2〉記載の普通預金、定期預金に計七一万九二一八円、昭和五七年においては別表〈3〉記載の普通預金、定期預金に計一七九万九二八〇円が当てられたと認める余地があり、これら口座の預金は富子の生活費等からのものと認めるのが相当である。

従って、右別表〈1〉ないし〈3〉に該当する預金については事業主貸し勘定から控除すべきであり、各年における事業主貸し勘定からの預金控除額は別表〈4〉記載のとおり昭和五五年分二二〇万二六六六円、昭和五六年分二五九万三九六八円、昭和五七年分四四六万四二七一円となる。

3  論旨は以上認めた限度で理由がある。

二  控訴趣意第三1ないし3について

論旨は、被告人の自宅の電話料金の八割及び株式会社クラタに対する支払の五割は、いずれも営業用の必要経費として事業主貸し勘定から控除すべきであるのに、これを認めなかった原判決は事実を誤認した結果、所得税法四五条一項一号、同法施行令九六条、所得税法基本通達四五-一、四五-二の解釈適用を誤ったものであり、また、昭和五六年二月一六日京都相互銀行御室支店の被告人名義の預金に入金された三五万〇五〇五円は、満期から中途解約により第一生命保険会社から入金されたもので所得を構成すべき性質のものではないから、事業主貸し勘定から控除すべきものであるのに、これを認めなかった原判決は事実を誤認したものである、というのである。

そこで、所論及び答弁にかんがみ記録を調査し、当審における事実取調べの結果をも加えて、以下順次検討する。

1  電話料金について

前記査察官調査書(検二一号)、当審で取調べた査察官作成の調査報告書(平成二年六月二二日付)によると、電話料金は昭和五五年七万二一三〇円、昭和五六年七万五九六〇円、昭和五七年六万六五七〇円、当時の基本料金は月額一八〇〇円(年額二万一六〇〇円)であることが認められるから、右基本料金を除外した通話料金の一か月平均は昭和五五年四二一〇円、昭和五六年四五三〇円、昭和五七年三七四八円であり、右金額は一般家庭のそれに比して多額とはいえず、所論指摘の法条(施行令、通達を含む)が定めている「経費の主たる部分が業務の遂行上必要あり、かつその部分を明らかに区分することができる」場合に当たらないから、これと同旨の原判断は正当として是認することができ、この点の論旨は理由がない。

2  株式会社クラタに対する支払いについて

倉田保三作成の取引内容の明細照会に対する回答書、前記査察官調査書(検二一号)によると、株式会社クラタに対する支払いは昭和五五年二九万九四五〇円、昭和五六年三一万七六〇〇円、昭和五七年四二万二五七〇円であり、金額的には酒類代金が最も多額であるが、購入商品中に灯油、家庭用調味料等も多数含まれていること、当審で取調べた総勘定元帳(昭57・1~57・12)によると、かなりの金額(昭和五七年に限ってみても、贈答品代約九二万円を含め総額三五四万余円に上る)が接待交際費勘定に計上されていること、被告人方従業員は当時六名位で、その慰労のためときに酒食を提供することがあったことが窺われるが、取引の記録等に基づいて、右株式会社クラタに対する支払金額のうち業務遂行上必要な部分が五〇パーセントを超えるものと明確に区別して認めることができないから、家事関連費と認めるのが相当であり、これと同旨の原判断は正当として是認することができる。

もっとも、右総勘定元帳によると、株式会社クラタに対する支払のうち昭和五七年九月一〇日(右総勘定元帳の記載は同月一二日)の一万一〇〇〇円及び一五万七〇〇〇円については、接待交際費に計上されており、被告人の業務遂行上の必要経費と認められるから、昭和五七年分一六万八〇〇〇円を事業主貸し勘定から除外すべきである。この点の論旨はこの限度でのみ理由がある。

3  京都相互銀行御室支店の被告人名義の預金に入金された三五万〇五〇五円について

大蔵事務官作成の査察官調査書(検七八号)によると、昭和五六年二月一六日第一生命保険会社から右被告人名義の普通預金口座に三五万〇五〇五円が入金されていることが認められるが、証拠上右金員の性格が判然としない。原判決はこれを事業所得として計上したが、生命保険契約に基づき分配を受ける剰余金ないし割戻金であって事業所得を構成しない性質の金員と認める余地があるから、右三五万〇五〇五円を昭和五六年の事業主貸し勘定から控除すべきである。この点の論旨は理由がある。

三  結論及び自判

以上説示したとおり、原判決は、昭和五五年において二八〇万三三二四円、昭和五六年分において三七八万七七一四円、昭和五七年分において七〇四万九〇三九円、事業主貸し勘定から除外すべき所得を認定した点で事実の誤認があり、右誤認が判決に影響を及ぼすことは明らかである。

よって、量刑不当の論旨に対する判断を省略し、刑訴法三九七条一項、三八二条により原判決を破棄し、同法四〇〇条但書により、更に次のとおり判決する。

(罪となるべき事実)

被告人は、京都市右京区御室小松町二九番地の一八に居住し、昭和五一年一月ころから同五八年八月三一日ころまでの間、同市上京区堀川通寺之内上る寺之内堅町七〇八番地において、「はりおか織物」の名称で袋帯及び婚礼用打掛の製造業を営んでいたものであるが、

第一  昭和五五年分の総所得金額が二億三七四六万六八四七円で、これに対する所得金額が一億六二六〇万四九〇〇円であるにもかかわらず、収支に関する記帳を行わず、右事業の一部を「織美」の名称を用いて従業員村上清二の事業に仮装し、かつ、同事業により得た所得を仮名、借名義で預金したほか、受取手形として留保するなどの行為により、その所得金額のうち二億〇七五一万四六八〇円を秘匿した上、同五六年三月一六日、同市右京区西院上花田町一〇番地の一所轄右京税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が二九九五万二一六七円で、これに対する所得税額が一一九〇万八六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同五五年分の正規の所得税額一億六二六〇万四九〇〇円との差額一億五〇六九万六三〇〇円を免れ

第二  昭和五六年分の総所得金額が一億三四四六万二八三六円で、これに対する所得税額が八五一四万〇七〇〇円であるにもかかわすらず、売上げの一部を除外し、あるいは事業の一部を「織美」の名称を用いて右村上の事業に仮装し、かつ、同事業により得た所得を仮名、借名義で預金としたほか、棚卸商品として留保するなどの行為により、その所得金額のうち七四三二万七三五八円を秘匿した上、同五七年三月一五日、同税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が六〇一三万五四七八円で、これに対する所得税額が三〇七三万一一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同五六年分の正規の所得税額八五一四万〇七〇〇円との差額五四四〇万九六〇〇円を免れ

第三  昭和五七年分の総所得金額が一億三九〇三万〇四二四円で、これに対する所得税額が八八六四万八八〇〇円であるにもかかわらず、前同様の方法により、その所得金額のうち四二五五万一〇〇二円を秘匿した上、同五八年三月一五日、同税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が九六四七万九四二二円で、これに対する所得税額が五六九六万五〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同五七年分の正規の所得税額八八六四万八八〇〇円との差額三一六八万三八〇〇円を免れたものである。

なお、被告人の昭和五五年ないし昭和五七年の事業所得等の所得金額、これから差し引かれる金額、課税所得金額、税額等の申告額、当裁判所の認定額及び増差額等は別紙「所得金額、税額等一覧表」記載のとおりである。

(証拠の標目)

当審証人岡富子の供述、当審で取り調べた査察官作成の調査報告書(平成二年六月二二日付)及び総勘定元帳を加えるほか、原判決の挙示する証拠の標目のとおりであるから、ここにこれを引用する。

(法令の適用)

被告人の判示第一の所為は、行為時においては昭和五六年法律第五四号による改正前の所得税法二三八条一項に、裁判時においては右改正後の同法二三八条一項に該当するが、右犯罪後の法令により刑の変更があったときに当たるから刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、判示第二及び第三の各所為は、いずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、各所定刑中いずれも懲役及び罰金の併科刑を選択し、なお情状により同法二三八条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罰の懲役刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で、被告人を懲役二年及び罰金六五〇〇万円に処し、同法一八条により右罰金を完納することができないときは金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から四年間右懲役刑の執行を猶予し、原審における訴訟費用については、刑訴法一八一条一項本文により被告人に負担させることとする。

よって主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 重富純和 裁判官 川上美明 裁判官 安廣文夫)

別表〈1〉

別表〈2〉

別表〈3〉

別表〈4〉

所得金額・税額等一覧表

昭和六三年(う)第六〇二号

控訴趣意書

所得税法違反 被告人 播岡彰夫

昭和六三年九月一日

右被告人弁護人弁護士 豊島時夫

大阪高等裁判所第二刑事部 御中

右被告人にかかる頭書被告事件について弁護人のなす控訴趣意の要旨は別紙のとおりであります。

第一 はじめに

原判決は原審弁護人の主張について慎重に耳を傾け、弁護人の主張の相当部分についてこれを認めていただき、感謝に堪えないところであります。にもかかわらず、控訴した理由は、左記事実についての認定及び法令解釈適用を誤り、ために相当多額の所得額についての認定を誤っているので控訴に及んだ次第であります。

第二 原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認がある。

一 被告人の妻播岡富子の生活費等の金額について

原判決は、被告人の妻の播岡富子(以下「富子」という)が、被告人から生活費として支給される毎月の生活費及びアルバイト料として取得し、富子が自由に生活費等に支出できる金員を「生活費等」と呼んでいるので、弁護人も右用語を使用することとするが、原判決は、右生活費等の毎月の金額を三〇万円と認定している。

しかしながら、右富子の質問顛末書(検察官証拠請求番号、以下「検」という、七四号)第四項及び、同女の原審の法廷における証言によると、富子は、昭和五五年以後被告人から毎月二五万円を生活費用として、貰っていたほか、被告人の本来の仕事を手伝って、おおむね毎月一〇万円の給料を貰っていた上、内職として、被告人の得意先などの商品の整理(反物のキズを修理することなど)などをして毎月約五万円のアルバイト収入を得ていた(同証言調書三丁表、四丁表ないし五丁表、八丁裏ないし一〇丁表、一八丁表ないし二〇丁表)ので、富子は毎月ほぼ四〇万円を得ていたのである。これに反する証拠はない。したがって、原判決が生活費等として富子が毎月三〇万円を得ていたと認定したのは、明らかに誤りであって、その金額は毎月約四〇万円、年額約四八〇万円が正当である。

二 原判決において、富子が生活費等から支出したと認めた金額の不合理性について

1 原判決は、原審弁護人が主張した預金など後記の各種支出について富子がしたものであることをほとんど否認、富子が生活費等の中から支出したものと認めたのは、別紙1記載のとおり

昭和五五年 五三一、八〇九円

同 五六年 七〇九、二九二円

同 五七年 七八四、七五八円

にすぎない。

2 富子は無駄使いせず、生活費は切りつめていたから、原判決が認めた別紙1以外の生活費は毎月一〇万円、年額一二〇万円くらいであった(控訴審において立証する)ので、これを右1に加えても、富子が生活費等から支出した金額は、

同 五五年 一、七三一、八〇九円

同 五六年 一、九〇九、二九二円

同 五七年 一、九八四、七五八円

しかないことになる。

3 前記一のとおり、富子は少なくとも毎年四八〇万円の生活費等を得て、これを自由に使用、処分していたのである。

したがって、毎年富子が得ていた右四八〇万円と右2の金額の差額である

同 五五年 三、〇六八、一九一円

同 五六年 二、八九〇、七〇八円

同 五七年 二、八一五、二四二円

は富子が毎年四八〇万円の生活費等を得ていながら、右金額を支出せず、現金で保管していたことになり(現金で保管していた証拠はない)、これは富子が支出を必要とし、現に支出していたと証言した。

支出を原判決が不当に否認したことによって生じたものであるから、原判決において、富子が生活費等から支出したと認めた金額はあまりにも過少に失し、極めて不合理なものであることが、まず、大筋において明白である。

4 原判決が、富子の生活費等より支出したものでないと認定した個々の理由の不当性については、おって補充する。

5 宇野礼子の保険料立替について

保険外交員である宇野礼子が同五七年七月一六日ころ、被告人を勧誘して保険契約をとり、第一回の年払保険料七七六、六〇〇円については同女が立替払をなし、翌年被告人より支払いを受けたものであることについては同女が二四回公判において、弁一、二号証を示して、るる説明証言したところである。

同女の証言によると、同女は銀行の紹介により、多数の高額保険の契約を得ていたこと、したがって相当多額の収入があったことが窺われるところ、同女は、本件契約をとることによって、契約の翌月には約四五万円の報酬を会社から支給されることになっている(同証言調書二三丁裏ないし二四丁裏)から、被告人分の立替保険料を急いで回収しなければならない経済事情はなかったこと、同女が被告人方に同五七年間に回収に赴かなかったことには色々な相当の理由があって、なんら不自然な点がないこと、同女は他の顧客多数に対しても被告人同様立替払いをしていたこと、例えば四方某に対する立替払い一、〇九四、七二〇円は一年後に回収にいっており、(同証言調書一八丁表裏)、後藤文子に対する立替払い三六六、九一三円は証言当時まだ貰っていない(同二三丁表裏)などの事実が認められ、被告人の保険料を五七年中には貰っていない旨断言している。

原審が右宇野の証言を信用しなかった大きな理由ではないかと思われるものに、弁二号証のノートが、同五八年分のものであって、同五七年分のを記載しているのは不合理で、後に、ことさら虚偽の事項を記入したものではないかと疑う余地がある部分がある。

しかしながら、詳細は後に調査立証するが、同女の証言によると、弁二号証のノートは同五七年一〇月ころ買える(同調書一五丁表裏)ほか、弁二号証に記載したのは弁一号証に記載してあったものを転記したもので、転記は、ずっと後になされたものである(同調書一六丁表)旨証言しているほか、検察官から五八年分のノートに、なぜ五七年分の事柄が記載されているのかについて突然追及を受けても、なんら慌てたり、困ったりすることなく問答の過程でごく自然に逐次それが不自然なものでないことが理解できる証言をしていることからも、同女の証言に虚偽はないと認めるのが相当である。銀行の支店長などにいわゆるコネがあり、その紹介によって保険契約をする相手方は、いずれも資産、信用に不安のない者ばかりであることは、銀行員が相手方の資産、収益状況をよく把握できる立場にあること、もし相手方が違約すれば、それは紹介した銀行の支店長の顔を潰すことになり、相手方自身の今後の資産繰りに影響しかねないなど公知の事実を総合すれば、右宇野が銀行から紹介を受け、当時盛大に事業を営んでいた被告人を信用し、いつでも保険料は貰えるものと安心していたことも、同女のように強力なコネを持つ有力外務員が多額の報酬を得ているから、七〇万円や一〇〇万円くらいの金を急いで回収しなくともよかったであろうことは容易に推認できることである。

右宇野が他の顧客についても長期の立替払いをしていた事実などについては控訴審において立証する。

第三 原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の解釈適用の誤りがある。

1 電話料金について

原判決は、おおむね「弁護人は被告人の自宅の電話料金の八割を営業用であるとして必要経費と主張するが、証拠上その部分が明確に区別されているわけでなく、使用目的が主として営業のためであるとも認められない。したがって事業主貸しから除外できない」旨判示して、この点に関する弁護人の主張を全部排斥した。

しかしながら右判決の判断は、所得税法四五条一項一号、同法施行令九六条、所得税法基本通達四五-一、同四五-二を不当に狭く解釈適用したものである。

税法は一方において推計計算を認めている。

所得税法においても、同法一五六条において、その旨規定されている。

同法の法文上は税務署長の推計計算を容認する規定であるが、税務署長が推計計算できる以上、納税者においても合理的である限り推計計算ができることは当然である。

裁判実務においても、この点は既に定着している(判例体系、租税法四巻三一八六頁ないし三一八七の九頁参照)。

したがって、被告人が自宅の電話を事業用に使用している(この点は控訴審において補充立証する)場合に、その使用による電話料金が、金額の何割を占めるかを推計して、事業用として使用したと認定される部分を必要経費に算入し、事業主貸勘定から差引くのは当然なすべき計算である。

原判決は、被告人の事業用使用部分が「証拠上明確に区分されていない」とか、「使用目的が主として営業のためであるとも認められない」などというが、そもそも所得税法上所得の計算は明確な証拠により、明確に計算することが当然要求されている。推計計算は、それが合理的である限り明確な証拠として認めているのが前記所得税法一五六条の規定であるる推計が合理的であるかぎり、それは証拠上明確に区分されているというべきである。

また、「使用目的が主として営業のためであるともみとめられない」という点は前記基本通達四五-二後段の趣旨を無視するものである。

もとより通達はあくまで通達で、裁判所の裁判を拘束するものではないが、右通達は合理的であって、他の納税者がこの通達の趣旨にしたがった取扱いを受けている上、現に裁判実例でもこれを前提とした判断をしているのであるから、独り原判決が、本件において右通達の趣旨に反する判断をするのは不当である。

2 クラタに対する支払いのうち五〇パーセントを事業主借勘定とすることについて

この点についても原判決は右1とほぼ同様の理由により、事業主借勘定とすることを否定している。

被告人の自宅において従業員に簡単な酒食を提供して、その労をねぎらうとともに、仕事の打合せをなし、明日への活力を増進させていた事実については控訴審において補充立証する予定であるが、原判決はこの点についても前1同様判断を誤っている。

3 同五六年分の所得から京都相互銀行御室支店の被告人名義預金に同五六年二月一六日入金した三五〇、五〇五円を差引くことについて

原判決の預金に関する説示によって判明したことであるが、検七八号証二五一頁を見ると、同日同金額が、第一生命保険会社から京都銀行三条支店を通じ、右被告人名義の預金に入金されている。

被告人の説明によると現在のところ詳細は不明であるが、いずれにしても満期か中途解約により、第一生命保険会社から、被告人に支払われた金員であるとのことである。

保険金の支払いの際の所得計算については、煩雑な計算を必要とするが、そのほとんどが所得を構成しないことは明らかである。

この場合、支払われた金員の性格、所得となる部分の有無、所得となる部分があれば、その金額はいくらであるかの立証責任は、検察官側にある。

弁護人としては、右支払われた金員には所得を構成する部分がないものとして右金員全額を店主借りとして所得から差引くべきものであることを主張する。

以上

別紙1 播岡富子が生活費等から支出したものと原判決が認めたもの

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